
浜沢投/ガーネット文庫 2003-06発売




「ただの冒険者には興味ありません。この中に怪我人、病人、虚弱体質がいたら、私のところに来なさい。以上」冒険者の宿に入るなりそんな挨拶をぶちかました、イノリ=ノーレッジ。人によっちゃ侮辱とも取られかねない台詞だが……。だけどその言葉は彼女の中では大きな意味を持っていたんだ。ある日俺は“気弾の射手”という彼女の二つ名を知る──。
気弾の射手、要するにフォースをぶっぱなすプリーストだということらしいです。
この話は神官として冒険者になったイノリが、運と性格からかフォースの射手として知られているところから始まります。実はそれにはイノリ自身も知らない秘密があって──。
ちなみに本文はすべてイノリと知り合った『俺(作中では名前が出てきません・笑)』の視点から語られているのですが、彼の日常もイノリと関わるうちにだんだん変容していきます。正直、上手いなーと思わせる箇所が多く、第四章でイノリが実際に治療に携わるところの前後などは、もしかしたら作者も実際にその経験をしたのだろうかという考えさえ浮かびます。
ガーネット大賞受賞作でこれがデビュー作品です。この作者の作品をもっと読みたいなと思いました。
Comment(0) 2012-03-07

下辻村彷徨/ジルコニア文庫 1999-06発売



卓には夢があるかい? 残念ながら、ここにはそんなものはない。でもこの物語に出てくるプレイヤー達はみんなそれなりに欲望を持って、それを叶えるため黙っていたり、あるいは完全に開き直って目標に突き進んだり、自分の役目と言うのが何なのか判らなかったり、叶うはずのない願いを叶えようとしたり、その姿勢の前向きさで他人に迷惑を与えたりしている。これはバラバラなセッションだ。かなり無意味で、少し疲れる話だ。―え? ぼくかい? ぼくの名は“ゲームマスター”―。第4回エーデルシュタイン小説大賞「大賞」受賞。
これが出たときは衝撃でしたね。
久々の再読です。本作は人気もあってかなりの数のシリーズが出ていますが、時々それでよかったのかなあと感じることがあります。というのは、この一冊目のある語り手が出した一つの結論が、続刊によって否定……とまではいかないかもしれないけど、軽くなっているような気がして。それで☆を一つマイナスにしました。
でも、続編も結構好きなので、悩ましいところです。
ストーリーはある集まりでPC1をやることになった男子高校生の語りから始まります。章ごとに違うプレイヤーにスポットライトを当て、バラバラに(紹介にもありましたが本当にバラバラです)動いていくそれぞれがクライマックスに近づくにつれて……というお話。
プレイヤーに対して斜に構えているようなGMが、実は人間もTRPGも大好きなんだ──ということがだんだん分かってきて、それでもこの卓とGMは本当の意味では相容れなくて、切ない。
GMを始めたばかりの人には、逆に薦められない本です。
Comment(0) 2012-03-05

ノノ・バニラッテ/柘榴新書 2011-07発売




冒険者はなぜ神を求めるのか? コンジャラーは『無神論者』なのか? 第四の剣の正体は? ライフォス、ティダン、ダルクレム、キルヒアの四大古代神から、ニールダ、ルーフェリアまで、7人のセージとノノさんが読み解いた。加護を正しく受け取るために必要なエッセンスがこの一冊に。
さすがは神族研究にこの人ありと言われるノノ・バニラッテ氏の著作です。ゲストの顔ぶれもルーフェリアのバトエルデン・エラー氏を始め、各神殿の重鎮が揃っています。
操霊術を修める身としては少々手の伸ばしにくいところでもあったのですが、それに関してもノノ氏他はいつもの明快な調子でばっさり斬っています。各神殿を横断してその差異や共通点を詳らかにし、神の奇跡を受ける側の心構えなどについても言及があり、すべての冒険者が必ず読むべき、と言っても過言ではないでしょう。
Comment(0) 2012-03-01

タイカイ ホトリ/ガーネット文庫 2004-06発売


平凡に暮らしていた蛙ピョートルは、突然、剣の作りし世界ラクシアに召喚されてしまう。ピョートルを召喚したのはソーサラーの心得はあってもMPが0のグラスランナー・アーニャだった。召喚の儀式によって呼び出されたピョートルは4500ガメルでアーニャと使い魔としての契約を結ぶ。こうしてアーニャとピョートルの冒険の旅が始まった。
グラスランナーに使い魔を持たせる、というアイディアがおもしろいところです。魔術師の視点としては、それで何ができるのだろうかと首をひねらざるを得ないのですが。それにしても最近は変わった冒険者の話ばかりを読んでいる気がします。
しかしこの作品はアイディアだけに留まらず、魔術師アーニャと使い魔ピョートルがとても愛すべきキャラクターに仕上がっているところが魅力です。魔術師としても使い魔としてもできることは限られているのですが、他の技能で補ったり、時には仲間を頼ったり、その辺りの描写に嫌味がない。
そしてクライマックス、主人であるアーニャの懐に隠れているならば敵の魔法ダメージもすりぬけられるのに、敢えて別行動を取り、戦局に貢献したピョートルの勇気には拍手喝采でした。
ただ、私としてはやっぱりフィクションだなあと思える箇所がところどころあったので、☆は三つで。魔術師や冒険者や色々深読みしてしまう質でなければもっと純粋に楽しめるかもしれません。
ラストに出て来たもう一人のかえるさんの使い手、ハノンが今後キーパーソンになってくるのでしょうか。気になります。
Comment(0) 2012-02-29

猫島一途/アカツキ文庫 2007-06-19発売



――20年前の世界的ウイルス汚染により、人類の七割が不治の病に侵された日本。裏社会を守る「オーヴァード」のひとり、コードウェルは二子玉川の鉄橋で異能の中年と刃を交える。彼は、不死身の力を持つオーヴァードだった。中年を配下としたコードウェルは遺産回収のチームに同道する。――荒廃した東京で、絆と裏切りの戦記が幕を開ける!
オーヴァードネタだということで買ってみました。表紙買い? いえいえそんなことはありませんよ。(笑)
元ネタは有名NPCなのですが、なるほどこうきたかという設定と描写のオンパレードです。しかもチョイスが渋い渋い。(表紙みたいなシーンもありますが……)
しかし、逆に元ネタを知らない人にはどうかな……と思える描写も多少あったので、☆を1つ減らしておきます。今後は、作者のオリジナル部分の考察などが気になるところ。
Comment(0) 2012-02-25
画像とかボタンとか
ブログへの表紙画像の貼り方が分かったので、今日の更新から付けてみることにしました。
それから、本文下の拍手ボタン? よくわかりませんが、威力20がどうこうとか公式に書いてあります。
クリックすると楽しそうなので付けています。時々増えたりするみたいです。
Comment(0) 2012-02-23

砦秋雨/月光新書 2009-12-04発売



ベルダインでペットショップに勤務する少女が古本屋で手に入れた冊子。それは“魔女”ラヴェルナの著した『博物記』の写本でした。最初は自分の扱う動物たちとのあまりの違いに戸惑いますが、だんだん魔獣や幻獣たちを含む生き物のありかたが、動物だけでなく人間にも繋がるところに気づいて──
『もしハク』の略称で大ブームになった本ですね。今更中身を説明する必要はないと思うのですが(タイトルそのままですし・笑)。
最初は表紙の賜のブームかな、などと考えていたのですが、中身はものすごくしっかりしていてしかもするする読める。この両立はかなり難しいことだと思います。
読み終えた後には少し自分自身の知識も増大したような感触に浸れます。
ただし読み終わると『博物誌』本編のほうも読みたくなってしまいます。出版社同じなんですね。いい商売です(笑)
Comment(0) 2012-02-23
おおき明人/ジルコニア文庫 2007-02発売


『マスター時だけダイス運がいい』というちょっと変わった特徴を持つゲームマスター。その彼の元にセッションのさなか突然現れたのは、色とりどりの砂糖菓子のような素材でできた可愛いダイス。しかも『自称』出目が悪かった。さらにそのダイスの言う事には「この判定にプレイヤーが失敗すれば、キャンペーンは崩壊します。その気配を感じて私は来ました。低い出目を出し、PCを勝たせるために」彼(?)らに全く見覚えのないマスターは、果たしてそのダイスを使うのか、それとも――
マスターの時だけダイス目がいい……。ちょっと考えたくありませんね(笑)。
そんな主人公が、選択を迫られるところから話が始まります。
その選択のせいで主人公は『彼ら』につきまとわれることになって……。
自称出目が悪いダイスがかわいい。使いたいかと聞かれるとまた別の話ですが。(笑)
GMに対するプレイヤーの反応などもリアルで、さっくり読めました。まあ、もっと大きな事件を起こしてもよかったんじゃないか、と思うところですが。
Comment(0) 2012-02-21
岸谷青二/月光文庫 2009-03-12発売



オランへ留学した水野良は下宿先で夜毎亡霊に悩まされ、そこで賢者の学院に相談すると変わり者で有名なデュダ氏を紹介される。ところが訪ねたデュダ氏はなんとドワーフの賢者兼(自称)名探偵。頼りになりそうなのは、人当たりの良い助手のエルフのリュークだけだった。
折しもそこに家宝を盗まれたという男と出会うのだが、なんとその家宝は豚の足…!
願いを三度まで実現するという魔法の豚足だと。居合せた水野もこの難事件解決に一役買うことになるのだが……。本格推理長編。
既にタイトルだけで一本持って行かれませんか? ずるいでしょう?(笑)
あの水野良をオランに留学させる(スイフリーじゃないんですよ)という発想もさることながら、それで紹介されるのがデュダ。紹介するほうもするほうです。
そしてデュダ・シリーズにはおなじみの漫才みたいな会話(もちろん、本人達は大まじめ)が繰り広げられるわけですが、水野先生、流されそうに見えて結構ツッコんでます。
そして魔法の豚足盗難事件解決依頼、これを持ち込んだ依頼人ももちろん大まじめ。
中盤まではただ笑ってるだけでページが進んでしまったのですが、そこはそれ、あの水野良をデュダ・ワールドに引っ張ってくるだけはある。
盗難事件が殺人事件に化けて、無茶なアクションにちょっとお涙頂戴の場面もあったりして、作者さん、正直欲張りすぎだと思います(笑)──それはタイトルを見たときから瞭然でしたよね。
Comment(0) 2012-02-15
はじめてみました
はじめまして。pen&flowerと申します。
少し冒険者の経験もありますが、最近はもっぱらフェイダン地方はカイン・ガラのカヴンで研究、修行を行っている身です。
その合間に結構本を読むもので、その記録を付けてみようと思ってブログを始めました。
美味しいお茶を淹れながらでも、読んでいただければ幸いです。
Comment(0) 2012-02-15