珠玉を見つけた、と思った。


ファンタジア。 「マホウツカイノデシ」 by Kazami SHIHO since 1998



Thinker  Who is he?

 未だ夜も明け切らぬ薄暗い世界、一人の男が座っていた。
 ブラインドも上げ放しの部屋の中はわずかに紫色で、姿見だけはめこんだ粗末な壁紙に囲まれてささやかな空間と、皺の形跡すらないベッド、力の入れ加減によっては今にも壊れそうな木の椅子とが認められる。
 大柄とも小柄ともいえない彼は鏡に映る顔すら判然とさせず、上品でも粗暴でもない風情で小さな椅子にうまく収まっていた。
 相手も見えず、「君は誰だ」と問うから彼誰時-かわたれどき-という。
 しかし鏡の中には、眼光のみがそれ自体日の出を待たずに陽光を映してみせる月のように冴え冴えとしていた。
「自分の蒔いた種、……か  
 男は思考のひとひらを吐息にのせる。それは紫闇の中いっとき白くふくらみ、すぐに拡散してしまう。
 種蒔き人は、その時には決して収穫の如何-いかん-を知り得ない。
「自分で刈り取るべき、という趣向-こと-かな」
 ただ、自分の蒔く種の種類は知っている。そして種は、正確に遺伝子に従って結実するのだ。
 男はいつまでも鏡を見ていた。己の目つきを確かめるように。





Tinker  Who is she?



© Kazami SHIHO 2001.