04-Can You Keep A Secret?
「隠しおおせると、思ってるわけ?」
唐突なのだがこの街には悪の秘密結社の人たちがいる。
悪の秘密結社というと勿論あれだ。身代金を請求するでもなく子供たちをさらい、とってつけたような怪音を言葉尻にくっつける、舞台の上でもないのに今時全身黒装束だったりしてやたらと目立ちたがりの人たちである。
で、そんな人たちが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しているこの街で、なぜみんながのんべんだらりと気の抜けた生活を送っていられるかというと、単純明快。
セオリー通り、悪な人たちだけじゃなくて、正義の味方もいるからだったりする。
「ああ、今回は銀行強盗未遂だったんですねぇ」
いつも通りの朝、ご飯のあとにふとテレビをつけた真実(こころ)は、ニュース映像におなじみの黒ずくめ集団を見つける。
「そそそ、日曜のでしょ? それがさあ、あの人たち全身黒タイツに黒覆面じゃん。最初誰もが一般市民の銀行強盗だと思ってて、まともに警察に通報してたらしいよ」
「おやおや」
秘密結社の人たちを退治するには、普通の警察の人じゃダメなのである。
「でもお姉ちゃん、それって喋ればすぐにわかっちゃうんじゃないの? あの口調だから」
「勿論、口を開きゃあ『俺達は銀行強盗だズー』『金を出すズー』だったから、すぐわかったみたいだよ」
言いながら峰子は、ぷっと軽く吹き出した。
「それは……、そうでしょう、ねぇ」
「うんうん、銀行強盗だズーって、ちゃんと宣言するんだなー」
「ズーって……いつも言ってるけど、お風邪でもひいているんでしょうか……?」
真実、雅、星(しょう)も次々にくすくす笑い出してしまう。
ニュース映像は事件のいつも通りの解決を伝える。
「……というわけで、今回もどこからともなく現れた正義の味方の活躍によって、お縄になった戦闘員たちでした。
さて、次のニュースです。動物園でベビーラッシュが……」
「ってわけで、めでたしめでたしでしたっと」
「おー」
「っ☆ 正義の味方さん、いつもお疲れ様ですねっ☆」
「だねえ、誰に給料貰ってるわけでもないだろうに、頑張るよねえ」
「……はっ、もしかして正義の味方さんには正義の味方さんの、会社があったりっ?」
「ああ、……あんなに頑張ってるんだから、そうかもしれませんねぇ」
「時給かな? それとも戦闘員一人あたりいくら、とか? 怪人倒したらボーナス貰えたりして」
「うむ、あり得るあり得る……ん? 無空(なすか)、どうしたの」
みんなして和んでる居間に無空が顔を出して、きょろきょろと何かを探していた。
「あ、いや……じゃむ兄に用があったんだけど。いない……みたいだね」
「じゃむ兄なら、ご飯のあとお部屋に引っ込んだみたいですよ。そっちは見ました?」
「うん、いなかったです。もう出かけちゃったかな」
「もう、って……」
「…………?」
雅と星は顔を見合わせる。
「僕たち、ずっとこの部屋にいたけど、じゃむ兄通らなかったよね?」
「そうですね……」
千夜(ちや)の部屋から玄関に出るには、必ず一度居間を通る必要がある。
「……まさか、前に言ってたとおりやっぱり窓から出ていってるんじゃ」
「そんなまさか。しん兄にまで家出の中学生みたいとか言われて、それでもそんなことやるじゃむ兄だと思う?」
「うん」
無空と雅はきっぱり頷いた。
「じゃむ兄なら。」
「……ごめん、確かにじゃむ兄なら」
この場に本人がいたらさぞかしさめざめと泣いたことであろう。
「それにしても、そんなに秘密にしなきゃいけないような仕事なのかねえ?」
「うーん……どうなんでしょう」
「じゃむ兄のことだから、単なるノリで内緒にしてたりして」
「うむ……だけどさ、内緒にされるとその分余計気になるよな」
無空の言葉にみんなうんうんと同意する。
「実は、みんなにばれるのを待ってるとか?」
「でしょ、これは追跡してみろ、って言われてると思ってやってみたんだけどねえ……
見事に撒かれたわ」
「お姉ちゃん……やったんだ」
「そりゃあね。」
雅さんと峰お姉ちゃんって、血は繋がってないはずなのに、なんだかみょぉ〜に似てるなぁ、……はっ、もしかしてっ☆ 魂のきょうだい? と星は端(はた)で思っていた。
「それは、峰さん一人で?」
「うん、もう三、四年ぐらい前のことだしねぇ」
とすると、このおうちに来てから二年ぐらいの頃の話かあ。
「ふ〜ん……じゃあ、今ならもっとうまく追跡できるかもしれないネっ♪」
お、雅さんがやる気だ。
「みんなで手分けできるし?」
「そっ」
雅は得たりと頷く。
「そうだね、今日なら俺達あいてるし」
長男が出勤に出るような平日に、のんびりテレビを見ていられたのは、三人の通う高校が創立記念日だったりするからなのだ。
「はいっ☆
……あれ、でも、お姉ちゃんは……?」
「あっ、お姉ちゃん……
けど、まさかお姉ちゃんがこのチャンスを逃すわけないよね?」
「まぁね」
峰子はふふんと笑う。
「自主休講ってやつ?」
「っ☆ 大学って、便利なのですねっ☆」
……とっさにそれは違うぞとツッコみたくなった峰子だったが、わざわざ墓穴を掘ることもないかぁと、やめておいた。
To be continued...
Written by
Kazami SHIHO
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