午前10時

金地区

 路地の向こうは明るい。家一軒ほどの長さを進んで、また違う大通りに出た。
 猫を探そうと視線を向けると、女性の呆れたような声が耳に届いた。

「バカ言わないでよ」

 ついそちらに目をやると、オーバーオールとバンダナの、二十歳前後の女性が腰に両手をあてて、きちんとしたなりの同年代の男性を睨み付けている。

「バカ言わないで。プロポーズってあんた何回目だと思ってるの」

 男性はこちらに背中を向けているためその表情は伺えないが、たいした間もなく彼は答えた。

「6回目」

 女性は両手を広げる。

「ふつう、同じ相手に6回もプロポーズしないって」

「うん。でも俺はしたいんだ」

「いい加減……、学習ってもんをした方がいいんじゃない?」

「思わない。だって俺、結婚したいのはオリザだけなんだ」

「あたしはしたくないの」

「……。なあ、俺たちうまくやってきたろ? 俺のどこが悪いのか、ちゃんと教えてくれないか。絶対直すから」
「そういうところ。
 トコ、行くよ」

 そう言うと、女性は君たちが追ってきた猫(改めて見ると、やはり黒っぽい毛並みの違う猫だった。また珍しいことに、左の前足は義足のようだ)をすくい上げて、傍らの魔動バイク(これもいろんな色のパーツが組み合わされてできている)にまたがって、大通りを去っていった。

アネット

「え、えーと…… 聞いてしまってよかったのでしょうか……」

どうする?

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